連載 「新学習指導要領」を斬る!Vol.2
小学校は来年4月から、道徳が「教科」になります。多くの学校で、評価や通知表の欄をどうするかなどの議論が行われています。道徳が教科になることは大きな問題です。そして来年は中学校道徳教科書採択の年です。
その中で大切にしたいことは何でしょうか。
「教科化」の危険性
子ども一人ひとりが生きていく上で、「何を大切にするのか」これは子ども自身が判断し、決定すべきことです。しかし、道徳が教科化されると「何を大切にすべきか」が教科書で押しつけられ、これに従わないと、評価が下げられるという状況が生み出されます。
これでは個人が否定され、子どもと本音でつながる教育も破壊され、建て前と本音を使い分ける子どもが、どんどんつくり出される危険性があります。
中心点は、子どもの自主的な判断力を育むこと
道徳教育でもっとも大切なのは、一人ひとりの子どもが生きていく上での、自主的判断力を豊かに育んでいくことにあります。教科書はあくまで国が検定した、一つの教材であり、これに縛られる必要はありません。このことは、教科書会社によって、教材がバラバラに異なっていることからも明らかです。教科書の教材より、目の前の子どもたちにあっている教材があれば、それを優先させていい事は、学校教育法に明記されています。
指導要領や教科書が示している徳目は、多様なとらえ方があり、教科書通りに縛られる必要はありません。徳目をおしつけるのではなく、大切なのは目の前の子どもたちから出発し、子どもの生活の事実や関心と結んで、自主的判断力や、価値意識を豊かに育むことです。そのような生きた授業こそ求められています。
どうする評価?
教科になると、評価をすることは避けられません。評価は「記述式」ですが、子どもたちの心や人格に評価をつけることは許されません。
そこで重要なのは「記述式」の利点を生かし、徳目で評価するのではなく、自主的判断力など、成長した変化を書くことが重要です。文科省も「児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め評価する」としています。
また、通知表の評価欄をどうするかも問題です。多忙化の中、記述の評価欄が増えることは、教員の大きな負担になります。通知表の作成権限は各学校にあり、評価欄の量は、それぞれの学校で決めることができます。新しく評価が始まるからと、大きな欄を設ける必要はありません。職場の実態から評価欄の量をどうするか議論し、すべての教職員が納得したものとなるよう、合意を図っていくことが重要です。
中学校は来年に教科書採択
道徳は教科化自体が大きな問題ですが、来年は中学校道徳教科書が採択されます。小学校の道徳教科書と同様に、より良い教科書などありません。
父母・府民と教科化の問題点について幅広い対話と共同を広げ、教科書展示が始まったら、多くの意見を寄せるために、早い時期から呼びかけていくことが重要です。(つづく)