大阪市こわしにNOの審判を!(大阪教育9月号)
大阪教育9月号
大阪市を解体し4つの特別区に分割する制度案が、府議会・大阪市会において、維新・公明・自民(一部)の賛成によって可決され、2度目の「住民投票(大阪市住民による)」が決定しました。
しかし、新型コロナ感染症によって、医療・公衆衛生・教育の分野で、いのち暮らしを守る社会体制の脆弱さが浮かび上がるなか、「今なすべきは『住民投票』ではなく、いのちと暮らしを最優先にした政治・社会への転換」の声が広がっています。
公衆衛生
「構造改革」の号令で、全国の保健所が、850カ所以上(1990年代)から472カ所(2019年)に減らされるなか、大阪市は24→1に激減させられました(府全体は54→18)。「保健所の少なさが、大阪のコロナ患者の重症者数や感染経路不明者数全国ワーストになっている大きな原因です」(医療関係者)
教育分野
ポストコロナにおいて、全国知事会・市長会・町村会が「少人数学級・教員確保」を求め、教育研究者有志が、「少人数学級と豊かな学校生活の保障」のネット署名を行なうなど、「少人数学級」実現は、国民世論として高まっています。堺市をはじめ府下13市町村では、財源・権限を活かし、独自の少人数学級を実施しています。
ところが大阪市は、約3分の1の小学校(84校)を対象に統廃合を推進しています。「密」をさけるための少人数学級の流れと逆行しています(府は、少人数学級独自実施しない5府県の一つ)。
「ラストチャンス」じゃなかったの?
5年前、大阪市こわし「反対」が市民の答えでした。当時市長であった橋下氏は「2度目はない。ラストチャンス」「否決なら都構想断念」と叫んでいました。維新政治は、市民をだまし、税金10億円もかけ、住民投票に猛進しています。このやり方に、「勝つまでじゃんけん」の卑怯なやり方、「閉店セールをくりかえす」詐欺まがい商法、などの批判がおきています。
問題なのは、
①住民投票が、市民の声からでなく、「維新」による党利党略であること。
②「都」構想と言っているけれど、都にはならず、半人前の自治体(=特別区)をつくるだけ。
③特別区になると、二度と政令市に戻れないこと(東京都の特別区のように)。
特別区は、自治体として半人前
維新は、今回の制度案を「バージョンアップ」したといいますが、骨格として特別区の分割を5→4にするだけで、政令市の権限・財源は弱体化し、他の市町村より一部権限が弱くなってしまいます。
―政令市の財源・権限が弱体化―
①一般財源約8600億円のうち約2000億円が広域的な事業として府の財源に吸収されます。
②府が進めるカジノ誘致(現在大阪市域の夢洲に建設予定)など、重要政策について賛否の意思決定ができなくなります。
―他の市町村より権限が弱体化―
③財源が府に委ねられるため、他の市町村より少人数学級の実施が困難になります。
④国との直接交渉権がなくなります。
2年前の台風21号被害に際し、大阪府は「独自の支援策をとらず、市町村任せ」でした。被害を受けた各市町村は「国との交渉権」を行使し、財政的な補助を獲得しました。
他の市町村への影響
(1)財政負担、毎年20億円
国からの交付金は政令市時と同額となります(橋下市長時、国に対し『同額でかまわない』と言い切る)。特別区分割による経費増(システム改修、庁舎整備など)が、毎年20億円の赤字となります(4人家族が1軒の家に住むのと、4人がばらばらに住むのとでは維持費用が大きく変わります)。
このコスト増が、他の市町村負担になる可能性が高くなっています。その期間は10年間とされていますが、「特別区黒字」の当てはなく、永遠に続く可能性があります。
(2)隣接市が特別区に
大阪市が廃止され「特別区」になれば、隣接している市は市議会の議決だけで「特別区」に移行することになります。北は豊中市、東は東大阪市、南は堺市までの10市が対象となります(図1)。その後も市町村合併と同じで他の自治体も次々と「特別区」にされる可能性があります。
「維新」の大嘘を見破ろう!
(1)「ニア・イズ・ベター」の嘘
①区域内に庁舎がなくなる
コスト削減のため、北と南に位置する2つの特別区は、区域内に庁舎がなくなります(中之島庁舎を共同使用する予定)。
全国見渡しても、区域内に庁舎がない自治体は、離島だけです。維新がいう「ニア・イズ・ベター(きめ細かな住民サービス)」とはほど遠い状態です。区域内に庁舎がなければ、確実に住民サービスは悪化します。自然災害(地震・台風など)時、住民の誘導など、深刻な事態をまねきかねません。
②今でも、住民のいのちくらしが危機に
大阪市は、区域内に24の区役所がある今でも、国からの「10万円給付」の遅れが全国ワーストです。また、コロナ陽性率が13・1%(大阪市以外の市町村は5・8%)と異常に高く、PCR検査の遅れが要因と考えられます(8月3日~16日)。
松井市長は市民の批判をかわすため「特別区で保健所が4カ所に」と言いますが、庁舎も建てないのに保健所が4カ所になる見込みはありません。
(2)「特別区黒字」?
維新は、特別区になれば黒字になると喧伝しています。その根拠としているのが、地下鉄からの配当金など1047億円を見込んだ「財政シュミレーション(2025~2039年)」です。
しかし、地下鉄は「コロナ」の影響を受けて乗客は激減し、今年4月から6月期の営業収支は前年比42%減、最終損益は39億円の赤字です。今後、インバウンドによる乗客増が見込まれない中、配当金が得られるかどうかも不透明です。
大阪市こわして何をしたいの?
大阪市こわし(都構想)のねらいは、破たんしたベイエリア開発の復活です。維新はこの間、「(オール与党時代)大規模な開発をやって失敗して『負の遺産』をつくってきた」と批判してきました。しかし彼らは、大阪市から吸い上げた財源を、「なにわ筋線」や「淀川左岸線延伸」など巨大開発につぎ込み、夢洲へのカジノIRに固執しています(図2)。総額1兆円を超え、暮らしこわしの設計図になっています。将来的には大阪府全域に特別区を広げ、財源を独り占めするねらいです。
大教組のとりくみ
大教組は、「住民投票」の問題点をしっかり学習するとともに、大阪市こわしが府全体の自治体こわしにつながることなど、全教職員との対話を広げます。また広範な府民・市民と反維新政治の共同を広げ、「住民投票よりいのち・くらし守れ」を高く掲げ、府下各地で奮闘します。
(2020.9.11)