子どもたちの人間らしい成長を促す教育委員会制度を
府内の元教育長や研究者など9氏が5月27日に地方教育行政法「改定」に反対する声明を発表しました。
以下に紹介します。
<ダウンロードは、こちら>
子どもたちの人間らしい成長を促す教育委員会制度を
―「教育委員会制度『改定』法案」反対声明―
今、国会で政府提案の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律改訂案」(教育委員会制度)が重大な局面を迎えています。
私たちは、教育・研究・地方教育行政にかかわってきた立場から、この法案が子ども・保護者・地域住民・教職員の願いからかけ離れ、豊かな人間形成をめざす教育の営みに背く重大な問題をもつものであると考えます。
同法案は、教育行政の基本方針となる「大綱」を教育委員会ではなく、「総合教育会議」で協議し、最終的に首長が策定することになっています。
また、教育委員長の任命・罷免権は、現行法では教育委員にありますが、「改定」案では、すべて首長がもつことになります。
このような「改定」案は、教育の政治からの独立性・自主性・地方自治の本旨を損ない、ときの中央政府と首長によって、教育への統制がさらに強められることになりかねません。
こうした重大な問題をもつ「法案」に対し、教育行政関係者や有識者から、その問題点が指摘され、批判と危惧の念が表明されています。「日本教育新聞」は、同法案に関する全国市区町村教育長アンケート結果を5月5・12日合併号で発表しました。回答者の56.1%が「有効な方法とは言えない」、66.6%が、「首長の権限が強まる」と答えたと報じています。
戦後教育は、日本国憲法の精神に基づき、教育基本法(1947年)、学校教育法(1948年)、教育委員会法(1948年)によって教育を国民の権利とし、教育の目的を「人格の完成」という、子どもたちの人間らしい成長・発達の保障を基本に出発しました。この精神は、今日の教育に関する国際動向にもなっているところです。
私たちは、政府提案の根拠としている、「いじめ」問題など今日の子どもと教育をめぐる諸問題は、教育委員会制度自体に根本的な原因があるのではなく、この制度を尊重し生かすことよりも、政治の力で「形骸化」されてきたことに、重大な問題があると考えます。
教育の内容とその制度は、ときの政権政党や首長の政治目的によって改変を重ねるのでなく、いじめ・不登校・体罰、「学力」問題など、子どもと教育をめぐる現実から出発し、保護者・教職員・教育行政関係者はもちろん、広く国民的な議論と合意をふまえ検討されるべきものです。それは、国に先行して実施された大阪府・市の「競争と管理・統制」の教育、首長主導の学校園統廃合、学校選択制、民間公募校長の導入、「教育諸条例」などが、学校から教職員の協力・共同や生きいきとした教育活動を損ない、新たな困難とも問題が生まれていることにも示されています。
教育は、子どもたちの人間らしい成長・発達を保障し、この国の未来を拓く重要な営みです。戦前の歴史に学び、教育に禍根を生むようなことがあってはなりません。
教育関係者はもとより府民のみなさんが、この問題に大きな関心を寄せ、拙速な審議によって同法案を成立させることのないよう、反対の世論をさらに広げて頂くことを心より訴えるものです。
2014年5月27日
<呼びかけ人>(順不同)
久田 敏彦 (大阪教育大名誉教授) 池田 知隆 (ジャーナリスト)
西林 幸三郎(元大阪府小学校校長会会長) 東谷 勝司 (元吹田市立教育研究所長)
北 容子 (元大阪市立幼稚園主任) 古久保 暢男(大阪退職教職員の会会長)
髙橋 保 (元堺市教育長・副市長) 久禮 信夫 (元岸和田市教育長)
小林 保夫 (弁護士・大阪教育文化センター評議員)
(2014.5.29)