教育文化府民会議は7月23日、中山徹さんを講師に学習会を実施しました。その講演要旨です(府民会議の責任でまとめました)。
「教育の充実と財政再建、その道筋を考える」 奈良女子大学 中山徹
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1、 橋下維新プログラム、3つの特徴とは
特徴の第一は、橋下知事は「子どもが笑う」と公約して当選したのに、子どもにかかわる予算を削減している。「公約違反」である。
二つめの特徴は「弱者にしわ寄せ」である。削っているのは、子どもや、非常勤という社会的弱者だ。
三つ目の特徴は、「公共事業の見直しは先送り」である。むだな大型開発はやめると言っていた。それが大幅に後退して、同和予算についてはPT案で削減が復活している。
2、 財政状況が改善されたら府民向け施策をもう一度拡充するのか?
大阪府民はマスコミの影響で「財政破綻している大阪の財政再建のためには辛抱しないといけない」と思い込まされている。そして「当分辛抱していたら、府民向け施策をしてくれるんじゃないか」と思っているが、そんなことは知事は一言も言っていない。誤解を解いていくことが必要である。
3、 橋下知事はなぜ府民向け施策を削減するのか?
財政が厳しいから府民施策を削るのではない。そもそも、教育や福祉や医療といったことは大阪府の役割ではない。それは、市町村や民間が担うことだ。大阪府は「コーディネーター役に徹していく」のだ。それでは、何のための財政再建か?それは、国際競争の時代に大阪だけでは勝てないから、関西経済が勝ち残るためには「大阪府を発展的に解消して」「関西州」をつくることが必要だ。そのために、府が赤字では合併ができない。だから財政再建が必要なのだ。
4、 大阪府を解体していいのか?
では、府民の目から見て、大阪府というものは解体していいようなものなのか!大阪のように教育でも格差が大きくなっている地域では、全体のかさ上げが必要だ。そのための施策は広域でないとすすまない。福祉施策も一部の市町村がやっていてはすすまないし、救命救急医療も同様である。70年代の黒田革新府政のときは、公害規制をした。出す煙の量や濃度は富田林市が規制しても堺市から煙がくるので、大阪府全体で規制しないと意味がない。大阪府のような広域自治体が果たす役割は、ますます大きくなっている。
5、 財政再建に他の道筋はないのか?
知事は大阪は破産していると言っている。しかし、それはウソだ。自治体の財政破綻は公債比率が25%を超えても健全化団体であり、まだ破綻していない。35%を超えて初めて財政再建団体で夕張市と同じである。大阪府は17、8%で府民施策を守りながら、財政再建をする体力はまだある。財政再建の必要はある。大型開発等の300億円の削減で、ゆっくりだが財政再建できるとの試算もある。
6、 橋下知事の新自由主義的考えが端的に表れた教育改革
橋下知事の弱肉強食の新自由主義的なイデオロギーが端的に表れているのが、教育改革である。競争主義的な教育である。たとえば、府立高校の学区撤廃で受験に強い大阪をつくる。土曜補講も府教委が考えているような底上げではなくて、勉強ができる子がお金がないのを補うような施策にしようとしている。学校を塾に貸すようなこともそうである。
7、 新自由主義的教育改革は何を導くのか?
教育格差は戦争と密接にかかわっている。アメリカでは徴兵制はもうやめている。貧困層がアメリカンドリームをかなえるには大学へ行くこと。軍隊に入れば4年間の学費は補償するといって勧誘する。格差政策をとっていれば、徴兵制はとっていなくても兵隊には困らない。また、戦争の民営化もすすんでいる。運送会社に就職したら、アフガニスタンで兵器を運ぶことをさせられた。給料は3倍である。貧困からぬけだしたい人たちが不足することはない。
8、 民主的な教育改革の方向性
教育格差の是正は行政が努力したらできること。全体的な教育の水準をどう引き上げていくかは教育環境の整備がかぎである。それと同時に参加型の教育をどうつくるかである。どのような学校をつくっていくのか、子どもの意見、保護者や地域の声を反映させていくべきである。学校を競争型に変えていこうとすると、先生達の人事や給料体系も競争型にせざるをえない。競争型の学校にしないためには、先生達の給料体系に競争を持ち込まないことが必要である。
(2008.7.29)